Anal Fistula
痔ろう(あな痔)の治療
肛門周囲の腫れ・膿・繰り返す痛み——
痔ろうは自然に治らず手術が基本です。膿が出る前の急性期も含め、大腸肛門病専門医がご相談をお受けします。
最終更新日:2026年6月23日|監修:院長 錦織 英知(大腸肛門病専門医)
痔ろう(あな痔)とは
痔ろう(あな痔)は、肛門の内部にある肛門腺に細菌が入り込んで感染し、肛門の周囲にトンネル状の管(瘻管)が残った状態をいいます。 多くはまず肛門周囲膿瘍として急性に発症します。これは肛門と直腸の境目(肛門陰窩)から入った細菌が肛門腺で化膿し、肛門・直腸の周囲に膿がたまった状態です。
この膿瘍が自然に破れて膿が出たり、切開して膿を出したりした後に、膿の通り道(瘻管)がトンネルとして残ってしまったものが「痔ろう」です。 いわば、肛門周囲膿瘍が急性期、痔ろうがその後に残る慢性期にあたり、ひとつながりの病気として理解されています。
痔ろうは自然に治ることはありません。 肛門の奥にできた瘻管は薬では塞がらないため、放置すると感染を繰り返したり、トンネルが枝分かれして複雑になったりすることがあります。気になる症状があるときは、早めにご相談ください。
原因・リスク要因
多くは肛門腺への細菌感染がきっかけで、体調や持病が関わることもあります。
肛門陰窩からの細菌感染
肛門と直腸の境目にある小さなくぼみ(肛門陰窩)から細菌が肛門腺に入り込み、化膿することが最も多い原因です。ここから肛門周囲膿瘍が始まります。
下痢・軟便を繰り返す
下痢や軟便が続くと、便が肛門陰窩に入り込みやすくなり、細菌感染のきっかけになると考えられています。お腹を下しやすい方は注意が必要です。
免疫力の低下・糖尿病
疲労や体調不良、糖尿病などで免疫力が下がっていると、感染が起こりやすく、また悪化しやすい傾向があるとされています。
肛門周囲膿瘍の既往
過去に肛門周囲が腫れて切開した・膿が出た経験がある方は、瘻管が残って痔ろうへ進行している可能性があります。繰り返す腫れにも注意が必要です。
クローン病との関連
炎症性腸疾患のクローン病では、難治性・複雑な痔ろうを合併することがあります。若い方や治りにくい痔ろうでは、背景にクローン病がないかの確認が大切です。
男性にやや多い傾向
肛門周囲膿瘍・痔ろうは、比較的若い世代の男性に多くみられる傾向があるとされています。ただし女性や高齢の方にも起こります。
これらの要因がある方すべてが痔ろうになるわけではありません。一方で、肛門周囲が腫れて痛む・膿が出る・腫れを繰り返すといった症状があるときは、早めに状態を確認しておくことが大切です。
種類と症状
痔ろうは、急性期の肛門周囲膿瘍と、その後に残る慢性期の痔ろうという、ひとつながりの経過で症状が変わります。
急性期:肛門周囲膿瘍
膿がたまった状態で、肛門周囲の腫れ・赤み・ズキズキする強い痛み・発熱がみられます。深い場所にできた膿瘍では、肛門の奥の鈍い痛みや倦怠感、高い熱が出ることもあります。この段階では膿を出す処置(切開排膿)が必要になります。
慢性期:痔ろう
膿瘍が落ち着いた後に瘻管が残った状態です。激しい痛みは引き、肛門の横の小さな穴から膿・分泌物が出る・しこりが触れるといった症状が続きます。体調が崩れると再び腫れて痛む——という悪化と軽快を繰り返すことがあります。
痔ろうは、瘻管がどのように走っているか(肛門括約筋との位置関係や枝分かれの有無)によって分類され、単純なものから複雑なものまであります。 トンネルが浅く一本道のものは比較的治療しやすい一方、深い位置を通るものや枝分かれして複雑になったものは、治療の難易度が上がります。
こんな症状はありませんか?
次のような症状があるときは、肛門周囲膿瘍・痔ろうの可能性があります。
- ✓ 肛門の横に小さな穴があいて、膿・分泌物が出る
- ✓ 肛門の周りがズキズキ痛み、腫れて熱をもつ・発熱する
- ✓ 過去に肛門周囲が腫れて切開した(膿瘍の既往)・腫れを繰り返す
- ✓ 肛門の周囲にしこりが触れる
- ✓ 下着が汚れることがある(膿・血性分泌物)
これらの症状は、痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)・皮膚の感染症などでも起こりうるものです。症状だけで判断せず、診察で状態を確認することが、適切な対応への第一歩になります。
検査・診断
診察で状態を確認し、必要に応じて瘻管の走行を画像で評価します。
問診・視診・指診
症状の経過(いつから腫れたか・膿が出るか・繰り返しているか)や、過去に切開した既往などを伺います。肛門周囲を観察して腫れ・膿の出口(二次口)を確認し、指診で痛みやしこり・瘻管の方向を調べます。多くはこの診察で見当をつけられます。
必要に応じた画像検査(MRI・エコー)
瘻管が深い場所を通る場合や、枝分かれして複雑なことが疑われる場合には、MRIや肛門エコーで瘻管の走行・広がりや、肛門括約筋との位置関係をくわしく評価します。手術の方針を立てるうえで役立つ検査です。画像検査が必要な場合は連携医療機関と協力して進めます。
クローン病など背景疾患の鑑別
若い方の痔ろうや、治りにくい・複雑なケースでは、背景にクローン病などの炎症性腸疾患がないかを確認することが大切です。下痢・腹痛・体重減少などの症状を伴う場合は、必要に応じて大腸の検査や専門的な評価につなげます。
早めの受診が大切です
肛門周囲膿瘍で強い痛みや発熱があるときは、膿を出す処置を急いだほうがよい場合があります。我慢して様子を見ず、早めにご相談ください。
治療・当院の対応
痔ろうは自然には治らず、基本的に手術で治療します。 急性期の肛門周囲膿瘍と、慢性期の痔ろうとで、対応が分かれます。
急性期:膿瘍の切開排膿
膿がたまった肛門周囲膿瘍では、まず切開して膿を出す(切開排膿)ことが基本です。膿を出すことで痛みや発熱がやわらぎます。ただし、これで瘻管まで治るとは限らず、後に痔ろうが残った場合は次の根治手術を検討します。
慢性期:痔ろう根治術
残った瘻管を治すために、瘻管の位置や複雑さに応じた手術を行います。代表的なものに、瘻管を切り開いて治す瘻管切開開放術や、ゴム糸などを通して少しずつ瘻管を処理し括約筋への負担を抑えるシートン法などがあります。術式は、肛門の働き(括約筋)をできるだけ損なわないよう、瘻管の走行に合わせて選びます。
当院が担当する範囲
肛門診療は当院の主要な診療分野です。大腸肛門病専門医が、肛門周囲膿瘍の切開排膿や、標準的な痔ろうの診断・手術に対応します。診察で状態を確認し、急性期の処置から根治手術の方針づくりまで、丁寧にご説明します。
連携医療機関へご紹介する範囲
瘻管が深く複雑なケースや、何度も再発しているケース、クローン病に関連する痔ろうなど、入院や高度な治療が必要と判断される場合は、連携している専門医療機関を責任を持ってご紹介します。紹介状の作成・必要な検査の追加・連携先の調整までお手伝いします。
「ただの腫れだと思っていた」「痔だと思って様子を見ていた」という段階でも構いません。まずは肛門の状態を確認し、結果に応じて次のステップ(処置・手術・専門医療機関へのご紹介など)を一緒に決めていきます。
担当医より
錦織 英知
院長 / 大腸肛門病専門医