Pelvic Organ Prolapse
骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)の相談
股に何か挟まっている感じがする、お風呂で違和感がある——
骨盤底専門外来で状態を評価し、保存治療・連携医療機関での手術紹介までご相談に応じます。
最終更新日:2026年6月23日|監修:院長 錦織 英知(日本大腸肛門病学会 専門医・指導医)
骨盤臓器脱とは
骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)は、骨盤底の支えが緩むことで、膀胱・子宮・直腸などの臓器が膣のほうへ下垂・脱出する状態です。 骨盤底は、骨盤の底で臓器をハンモックのように支えている筋肉や靱帯(じんたい)の集まりで、出産や加齢などによってこの支えが弱まると、上にある臓器が下がってきます。
下垂する臓器によって、子宮が下がる「子宮脱」、膀胱が下がる「膀胱瘤」、直腸が膣側へ膨らむ「直腸瘤」などに分かれ、複数が併発することも珍しくありません。 命に関わる病気ではありませんが、下垂感・排尿のしにくさ・排便のしにくさなどによって生活の質が下がることがあり、進行すると症状が強くなる傾向があります。
骨盤臓器脱は、出産や加齢に伴って起こりうる、決して珍しくない症状です。 相談しにくい部位のお悩みですが、軽症のうちに状態を把握し、生活指導や骨盤底筋トレーニングなどの保存的治療を始めることで、進行を抑えたり症状をやわらげたりできる場合があります。
原因・リスク要因
骨盤底の支えが弱まる要因や、お腹に強い圧(腹圧)が繰り返しかかることが関わるとされています。
出産
経腟分娩、特に複数回の出産(多産)は、骨盤底の筋肉や靱帯に負担がかかり、支えが弱まる大きな要因とされています。
加齢・閉経
加齢や閉経に伴い、組織を支える力が低下します。閉経後に症状が出てくる方も多く、年齢を重ねるほど起こりやすくなる傾向があります。
肥満・慢性的な腹圧
肥満や、慢性的にお腹へ圧がかかる状態(慢性の便秘でいきむ・長く続く咳・重い物を扱う仕事など)は、骨盤底への負担を高める要因とされています。
骨盤底の手術歴
子宮摘出術などの骨盤底まわりの手術を受けた後に、膣の天井部分が下がる「膣断端脱」などが起こることがあります。
便秘・排便時のいきみ
排便のたびに強くいきむ習慣は腹圧を繰り返し高めます。便秘そのものが要因となるほか、直腸瘤による排便障害が便秘を悪化させる悪循環も見られます。
体質的な要因
もともと組織が弱い体質や、ご家族に同様の症状の方がいる場合などにも、起こりやすいことがあるとされています。
これらの要因がある方すべてに骨盤臓器脱が起こるわけではありません。一方で、当てはまる項目が多い方や、気になる症状がある方は、一度状態を確認しておくと安心です。便秘や排便時のいきみなど、調整できる生活習慣もあります。
種類と症状
骨盤臓器脱は、どの臓器が下垂するかによって分類されます。複数のタイプが同時に起こることもあります。
子宮脱
子宮が本来の位置から下垂し、膣のなかや膣口より外へ脱出した状態です。下垂感・脱出感が主な症状になります。
膀胱瘤
膀胱が膣前壁とともに下垂したタイプです。尿が出にくい・残尿感・尿漏れといった排尿症状を併発しやすいのが特徴です。
直腸瘤
直腸が膣後壁側へ袋状に膨らむタイプです。便がそこに溜まり、強くいきまないと出ない・残便感などの排便症状の原因になります。当院が特に得意とする領域です。
小腸瘤・膣断端脱
小腸が膣後壁側へ下垂するタイプや、子宮摘出後に膣の天井部分が下垂するタイプです。下腹部の違和感・脱出感の原因となります。
こんな症状はありませんか?
タイプによって出やすい症状は異なりますが、次のような自覚症状がきっかけになることが多くあります。
- ✓ 股に何か挟まっているような違和感・下垂感がある
- ✓ 入浴時や排便時に、膣から何かが出てくる感じがある
- ✓ 尿が出にくい・残尿感がある・尿漏れも併発している
- ✓ 便が出にくい・強くいきまないと出ない・残便感がある
- ✓ 長時間立っていると下垂感・違和感が強くなる
- ✓ 出産後や閉経後から、これらの症状が出てきた
似た症状は、他の婦人科・泌尿器科・肛門の病気でも起こりうるものです。症状だけで判断せず、骨盤底機能・排尿・排便を専門的に診る外来で、まとめて状態を確認することが大切です。
検査・診断
問診と骨盤底の診察で程度を評価し、特に排便障害・直腸瘤の側面を丁寧に確認します。
問診
出産歴・閉経の状況・脱出感がいつから出たか・排尿や排便の症状・生活への影響などを丁寧に伺います。相談しにくい内容も、個室でプライバシーに配慮してお聞きします。
骨盤底の診察(程度の評価)
どの臓器が、どの程度下垂しているかを診察で確認し、重症度を評価します。骨盤底筋の締まり具合もあわせて確認し、保存的治療が向くか、手術を検討すべきかの目安にします。
排便障害・直腸瘤の評価
当院は大腸肛門病専門医による外来です。「いきんでも出ない」「残便感」といった排便症状や直腸瘤の関わりを、肛門・直腸の側面から専門的に評価できるのが特徴です。便秘や便漏れの併発も、あわせてご相談いただけます。
婦人科・泌尿器科との役割整理
子宮や膣そのものの精密な評価・手術は婦人科、膀胱や尿の精密検査・手術は泌尿器科が中心となります。
当院は、これらの科と役割を分担しながら、排便・直腸の側面の評価と、保存的治療を担当します。必要に応じて適切な科や連携医療機関をご案内します。
治療・当院の対応
骨盤臓器脱の治療は、大きく保存的治療と手術に分かれます。 軽症から中等症では保存的治療が中心となり、症状が強い場合や保存的治療で十分でない場合に手術が検討されます。 当院は外来のクリニックとして、保存的治療を骨盤底専門外来で担当し、手術が必要な場合は専門医療機関と連携・紹介します。
当院が担当する範囲(保存的治療)
骨盤底専門外来で、次のような保存的治療に対応します。特に直腸瘤・排便障害の側面を診ることを得意としています。
- ▶ 生活指導:便秘の改善・体重管理・重い物を持つ動作やいきみ方の見直しなど、腹圧を減らす工夫をご提案します。
- ▶ 骨盤底筋トレーニング:理学療法士・看護師が1対1で、正しい締め方・緩め方を指導します。軽症例では進行抑制・症状の軽減が期待できる場合があります。
- ▶ ペッサリー:下垂した臓器を膣内のリング(ペッサリー)で支える方法です。手術を希望されない方や、手術までの期間の選択肢になります。
当院では行わず、連携先へご紹介する範囲(手術)
症状が強い場合などには、メッシュを用いる手術や仙骨膣固定術などの手術が選択肢となります。 これらの手術は専門の婦人科・泌尿器科で行われ、当院では手術自体は行いません。 手術が適応となる場合は、診察・評価のうえ、連携している専門医療機関を責任を持ってご紹介します。手術の前後に、骨盤底筋トレーニングなどの保存的治療でサポートすることも可能です。
「どこに相談すればよいか分からない」という段階でも構いません。まずは骨盤底の状態を評価し、保存的治療を行うか、手術を検討して連携先をご紹介するか、ご希望と状態に合わせて一緒に決めていきます。
担当医より
錦織 英知
院長 / 大腸肛門病専門医